続 再会を夢見て

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前回、「 再会を夢見て 」 を書くために昨年の写真をそろえたりしていたら、湿原の葦原の風景などが脳裏に浮かび、風が吹きぬける度に聞こえるさらさらと鳴る葦の葉音が持病の耳鳴りより大きく聞こえるようになってしまいました。それじゃあ近々治療に出かけようかと思い、日頃このサーバーの運営管理でお忙しいNさんに息抜きに如何ですかと声をかけてみました。
是非一緒に行きましょうと話がまとまり、IT業務で溜まったストレス発散のNさんと、耳鳴りに重なる葦の葉音の治療が必要な私の二人連れが18日の早朝湿原の釣り行に出発することになりました。
車中での話題はルアー釣りが十数年ぶりというNさんの道具揃えの話題から始まりました。いつの釣り行でも同じですが計画を始めてから道具をそろえ、大物を釣ったときの処理まで考えるなど期待感にあふれた時間の経過があります。ほとんどの場合ここまでが最高に楽しい時間であって、これから先は期待が少しづつしぼんで行くのが普通です、最初は両手を広げたほどの大きさを想定した獲物もやがて肩幅ほどになり、そのうち何でも良いから一匹釣れないかなとなり、最後にはちらっとでも魚の影が見えないかなと思うようになるのです。
天候は曇り後晴れの予報どおりで釣にはもってこいの天候です。
車を置く道路脇の空き地に先行者の車がありません、連休初日にこんなことは珍しい事です。
Nさんの新しい道具の仕掛けを点検してから昨秋『いとう』に出会ったゆるい淀みの近くから始めました。川面を走る風はまさしく秋のものですが水面を流れる落ち葉の数はまだ少なくこれが釣り糸に絡まって困るようになる晩秋から初冬までがこの川のベストシーズンなのです。
背丈以上の葦の陰になると数メートルしか離れていないのにお互いの姿は見えません、シュッと竿が空気を切る音とポチャンとルアーが着水する音が聞こえるだけです。
このコーナーに網走港の鮭釣りが紹介されましたが岸壁で大勢の人が竿を出し、良い釣り場確保に奔走しているのとは対照的な釣りなのです。
やがて対岸の繁みいっぱいに投げ流心まで引いてきた私のルアーにガクンと当たりがあり、グンと引き込んだと思ったらバシャンと跳ね上がりました。見ると小型の『いとう』です、Nさんにヒットと声をかけてから抜き上げました、40センチほどのものでした。
昨年よりだいぶ小さいなと思いながらも『いとう』との再会が出来たことや、やはり一頃より資源の回復は進んでいるように思え嬉しさでいっぱいでした。
Nさんも水族館以外で『いとう』を見るのは始めてと銀白色に輝く精悍な姿態に感激の様子でした。写真を撮り、あと数年メーター級に成長した姿に再び出会えることを念じながら放流してきました。
幸先良く幻の魚に出会ったのは良かったのですが、それ以後追ってくる魚影をいくつか確認できてもついにヒットには至りませんでした。偏光眼鏡を持って来なかったNさんにはコーヒーブラウンの色をした水中を走る魚体は見え辛く一度も確認できなかった様子でした。台風後、水量が治まった頃に見られる荒食いを期待していた予想は外れ、釣りガイドとしてはその役を果たせませんでしたが、うす曇りだった空にいつしか綺麗な秋空が広がり、遠くに見える山が黄ばみはじめたのが見うけられます、癒しの風景のど真ん中で数時間が過ごせたことでご勘弁を願ったところでした。
証拠写真のいとうさんにもNさんにも葦の葉のモザイクがかかっています。

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